「次回の契約更新はありません」
派遣会社から告げられた突然の雇止め(契約期間満了による退職)。生活の不安、納得できない怒り、何から手をつければいいのか分からない焦り……。多くの派遣社員の方が、この理不尽な通告に頭を抱えています。
もしあなたが「まだ働き続けたい」「この雇止めは不当だ」と感じているなら、泣き寝入りしてはいけません。しかし、闇雲に会社に抗議したり、労働局に駆け込んだりするのは得策ではありません。労働紛争には「勝つための正しい順序」があるからです。
この記事では、派遣社員が雇止めを通告された際、どのような順番で行動すべきか、法的根拠と実務的な戦略に基づいて解説します。「雇止め理由証明書」と「あっせん」の優先順位、そして内容証明郵便を使うべき本当の理由について、具体的にお伝えします。
結論:まずは「あっせん」ではなく「雇止め理由証明書」の請求から
結論から申し上げます。雇止めを告げられた直後、最初に取るべきアクションは労働局への「あっせん申請」ではありません。まずは派遣会社に対して「雇止め理由証明書」を請求することです。
なぜなら、戦いの「相手」と「武器」が定まっていない状態で戦場に出ても、負ける確率が高いからです。
なぜ「証明書」が最優先なのか?
「雇止め理由証明書」とは、会社があなたを更新しないと判断した「具体的な理由」が記載された公的な書類です(労働基準法に基づき、請求があれば会社は遅滞なく交付する義務があります)。
これを最初に入手すべき理由は3つあります。
- 後出しジャンケンを防ぐため
紛争になった後で、会社側が「能力不足だった」「協調性がなかった」などと、後付けの理由を捏造するのを防ぐため、早い段階で理由を固定させる必要があります。 - 戦い方を決めるため
理由が「業務縮小」なのか「能力不足」なのかによって、反論すべきポイントや引用すべき法律が変わります。 - 失業保険(雇用保険)の判定に使うため
会社都合退職か自己都合退職かを判断する際の重要な資料となります。
戦略ステップ1:内容証明郵便で「雇止め理由証明書」を請求する
証明書の請求は口頭やメールでも可能ですが、雇止めに納得がいっていない場合、あるいは将来的に金銭解決(解決金)を目指す場合は、必ず「内容証明郵便」を使って請求してください。
なぜメールではなく「内容証明」なのか?
「たかが書類の請求に内容証明なんて大げさでは?」と思われるかもしれません。しかし、ここには重要な戦略的意味があります。
1. 「更新を希望している」という意思表示の証拠になる
雇止めを争う上で最も危険なのは、「労働者が合意の上で辞めた」とみなされることです。内容証明郵便の中に「私は次回の契約更新を強く希望します」という一文を入れることで、「私は辞めることに同意していない」という確固たる法的証拠を残せます。
2. 会社側にプレッシャーを与える
派遣会社の担当者は、労働法に詳しくないケースも多々あります。しかし、内容証明郵便が届けば、法務担当や上司が出てきます。「この労働者は法律を知っている。適当にあしらうと痛い目を見るぞ」と相手に警戒させ、適当な理由での雇止めを躊躇させる効果があります。
3. 時効を止める・権利行使の起点を作る
いつ、誰が、何を請求したかが郵便局に記録されるため、「言った言わない」の水掛け論を完全に封じることができます。
【重要】証明書請求時の文面ポイント
内容証明には以下の要素を必ず盛り込みましょう。
- 契約更新を強く希望していること(同意していないこと)
- 今回の雇止め(契約期間満了)の具体的な理由の開示を求めること
- 回答期限(本書面到達後1週間以内など)
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戦略ステップ2:理由ごとの「勝ち筋」を見極める
会社から「雇止め理由証明書」が届いたら、記載されている理由を精査します。ここが戦略の分岐点です。
ケースA:理由が「契約期間満了」「業務量減少」の場合
これらは一見もっともらしい理由ですが、以下の条件に当てはまる場合、労働契約法第19条により、雇止めが無効になる可能性があります。
- 過去に何度も更新が繰り返されており、実質的に無期雇用と変わらない状態である。
- 「次は長期で」「正社員登用もありえる」など、更新への期待を持たせる言動があった(期待権の侵害)。
ケースB:理由が「能力不足」「勤務態度不良」の場合
会社側にとって、この理由を立証するのは非常に困難です。過去に指導や注意を受けた記録があるか、改善の機会が与えられたかが争点になります。「突然言われた」「指導など受けていない」のであれば、不当な雇止めとして勝てる可能性が高まります。
戦略ステップ3:交渉決裂なら「あっせん」または「労働審判」へ
証明書の理由に対して、内容証明郵便で「その理由は不当であるため、雇止めを撤回してください」と反論(通知)を行います。それでも会社が応じない場合、ここで初めて第三者機関を利用するステージに移ります。
「あっせん」を利用すべきケース
都道府県労働局の紛争調整委員会による「あっせん」は、無料で利用でき、手続きも簡単です。しかし、あっせんには「強制力がない」という弱点があります。会社が「参加しません」と言えばそれで終了です。
あっせんが向いているのは、「会社が少し話し合いに応じる姿勢を見せている」場合や、「裁判まではしたくないが、解決金をもらって早期に手打ちにしたい」場合です。
「労働審判」を利用すべきケース
会社が強硬な場合や、より高額な解決金(給与の数ヶ月〜半年分程度)を目指すなら、地方裁判所での「労働審判」が有効です。調停案には強制力があり、数ヶ月で結論が出ます。ただし、弁護士への依頼がほぼ必須となるため、費用対効果を考える必要があります。
派遣社員特有の「派遣先」と「派遣元」の関係に注意
派遣社員の雇止めでよくある誤解が、「派遣先(実際に働いている現場)」に抗議をしてしまうことです。
あなたの雇用主はあくまで「派遣元(派遣会社)」です。派遣先が「契約を切る」と言ったとしても、派遣元にはあなたに対して「別の派遣先を紹介する」か「休業手当を払って待機させる」義務が生じる可能性があります。
派遣元が「派遣先が契約終了と言ったから、あなたの雇用も終わりです」と言うのは、法律的には通りません。これを安易に認めず、「派遣先が終了しても、派遣元との雇用契約は残っていますよね?」と主張することが重要です。
まとめ:焦ってサインせず、証拠固めから始めよう
雇止めを言い渡された時、派遣会社の担当者は「離職票を早く発行するために、この退職合意書にサインしてください」と迫ってくることがあります。
絶対にその場ではサインしないでください。
「合意退職」にサインをしてしまうと、不当な雇止めとして争う権利も、会社都合退職として失業保険を有利に受給する権利も失う可能性があります。
正しい戦略は以下の通りです。
- 雇止め通告を受ける(合意書にはサインしない)
- 内容証明郵便で「更新の希望」と「雇止め理由証明書の請求」を送る
- 証明書の内容を精査し、不当性を主張する
- 交渉が決裂したら、あっせん等の法的措置を検討する
このプロセスを踏むことで、雇止めの撤回を勝ち取ったり、納得のいく解決金を得たりする可能性が格段に上がります。一人で悩まず、まずは「書面」で相手の出方を伺うところから始めましょう。
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