契約解除通知とは?法的な意味と基本の考え方
「もうこの契約を続けられない」「これ以上の取引は難しい」——。
そんなときに必要になるのが、契約解除通知です。
契約解除通知とは、当事者の一方が「契約を終了させたい」という意思を正式に相手へ伝える書面のことです。
口頭やメールだけでは、後から「言った・言わない」の争いになりやすいため、内容証明郵便で送付して証拠を残すことがとても重要です。
内容証明郵便を利用すると、
- いつ(差出日)
- 誰から誰に
- どのような内容の通知をしたか
を日本郵便が公的に証明してくれます。
将来トラブルになったときに、「確かにこの日に解除の通知を出した」と主張しやすくなります。
契約解除通知は、単なるクレーム文書ではなく、
契約関係を一方的に終わらせる重い意思表示になることがあります。
送る前に「本当に解除して良いのか」「法的な要件を満たしているか」を確認することが大切です。
どんなときに契約解除通知を出すべきか
契約解除通知が使われる場面はさまざまですが、代表的なケースは次のとおりです。
① 業務委託契約・顧問契約などの解除
顧問税理士・コンサルタント・清掃業務・システム保守など、
継続的なサービスを前提とした契約では、
- 成果がまったく出ていない
- 報告義務を果たしてくれない
- 信頼関係が壊れてしまった
といった場合に、契約解除通知によって関係を終了することが多くあります。
② 賃貸借契約(テナント・アパートなど)の解除
家賃滞納や用法違反(無断転貸・ペット禁止違反など)がある場合、貸主からの契約解除通知が問題となります。
一方で、借主側から「退去したい」という解約の申入れをする場面でも、書面で通知しておくことでトラブルを防ぎやすくなります。
③ 売買契約・請負契約(工事・リフォーム等)の解除
商品が約束の期日までに納品されない、施工内容に重大な欠陥がある——そのような場合にも、契約解除が検討されます。
特に法人同士の取引では、解除のタイミングや文面中の表現が、後の損害賠償請求にも影響しやすいため注意が必要です。
「催告による解除」と「無催告解除」の違い
契約解除には、大きく分けて次の2パターンがあります。
① 催告型の解除(まずは「いつまでに履行してください」と猶予を与える)
民法では、原則として「まずは相手に相当の期間を定めて履行を催告する」ことが求められます。
簡単に言うと、
- いつまでに(支払い・修理・引き渡しなど)を行ってほしいか
- それができなかった場合に契約を解除する旨
をあらかじめ伝えておく必要がある、ということです。
A: 場合によっては無効になるリスクがあります。
多くのケースでは、まずは「○日以内に支払ってください/修補してください」と催告を行い、
それでも履行されない場合に解除へ進むのが安全です。
② 無催告で解除できる場合
例外的に、次のようなケースでは「催告なしで解除」できるとされます。
- 催告しても意味がないほどの重大な契約違反がある
- 契約の目的を達成できないほどの履行遅延がある
- 相手が破産・夜逃げ等で、履行がほぼ不可能と思われる
ただし、「無催告解除かどうか」の判断はかなり専門的です。
自己判断で無催告解除をすると、後から「解除が無効」とされるリスクがあるため、慎重に検討する必要があります。
行政書士が徹底チェック&修正案を提示します。
内容証明で契約解除通知を送るメリット
① 「通知した」という事実を強力な証拠として残せる
内容証明郵便を使うことで、
- 解除の意思表示をいつ行ったか
- どの契約について解除したのか
- どのような理由・経緯で解除したのか
を明確に残すことができます。
将来的に裁判になった場合でも、「口頭で言っただけ」の場合よりも、はるかに有利に状況を説明できます。
② 相手に本気度を伝えられる
普通郵便やメールと比べて、「内容証明で届いた」というだけで、
相手が「これは本格的な法的トラブルになるかもしれない」と真剣に受け止めるケースが多くあります。
③ 感情的なやり取りを避けられる
直接の電話や対面だと、どうしても感情的な言い合いになりがちです。
内容証明なら、冷静に事実と法的根拠を整理した文章で意思を伝えられるため、不要なトラブルを減らす効果もあります。
契約解除通知の書き方:必ず入れておきたい4つの要素
契約解除通知を書く際には、最低限次の4つの要素を含めることが重要です。
① 解除の対象となる契約の特定
「令和〇年〇月〇日付で貴社と締結した〇〇業務委託契約」など、
どの契約を解除するのかを明確に特定します。
契約書に名称が記載されている場合は、その名称・日付・当事者をしっかり書きましょう。
② 不履行または解除事由の説明
解除の理由は、事実に基づいて簡潔に記載します。
- 納期に大幅な遅れが生じた
- 再三の改善要請にもかかわらず不良箇所が是正されない
- 約束された業務報告がまったく行われない
感情的な表現や人格批判は避け、「いつ」「どのような契約に基づいて」「どのような不履行があったのか」を中心に書きます。
③ 相当期間の催告(または催告不要である理由)
催告型の解除を行う場合は、
- 「本書面到達後○日以内に」
- 「○年○月○日までに」
など、具体的な期限を示して履行を求めます。
無催告解除を行う場合には、その理由(重大な契約違反など)を簡潔に触れておくとよいでしょう。
④ 契約を解除する旨の明確な意思表示
最後に、「本書をもって当該契約を解除いたします」など、解除の意思をはっきり書きます。
この一文がないと、「ただのクレーム」「改善要求の手紙」と解釈されるおそれもあります。
A: 解除が有効かどうかは、契約書の条項や、民法上の要件を満たしているかによって変わります。
特に、「いつ解除できるか」「どのような違反があれば解除できるか」が契約書に書かれている場合は、その条項に沿って判断する必要があります。
契約解除後に発生する3つの義務
契約を解除すると、それで終わり……ではありません。
解除後には、次のような義務や処理が発生することが多くあります。
① 原状回復(元の状態に戻すこと)
商品を返還したり、引き渡された設備を戻したりといった義務が生じる場合があります。
契約上、「解除時には相互に原状に復する」などの条項がないか確認が必要です。
② 既払金・預り金の精算
すでに支払った代金や預り金について、どこまで返金されるのかも大きな論点です。
一部履行がある場合は、履行済み部分とのバランスをどう考えるかも問題になります。
③ 損害賠償の問題
相手の契約違反により損害が出ている場合、解除と同時に損害賠償請求を行うかどうかも検討されます。
解除通知の中で損害賠償の考え方に触れる場合は、表現に注意が必要です。
解除通知の段階で損害賠償を全面に出しすぎると、相手の反発を強め、話し合いが難しくなることもあります。
状況によっては、まずは解除だけを通知し、その後の交渉で精算内容を詰めるという進め方も選択肢になります。
契約解除通知に関するよくある誤解
「内容証明を出せば自動的に解除できる」わけではない
内容証明はあくまで「どのような通知をしたかの証拠」です。
解除が有効かどうかは、契約書や法律の要件を満たしているかによって決まります。
「メールやLINEで解除を伝えれば十分」?
法的には、メールやLINEでも意思表示は可能とされています。
しかし、後から「そんなメッセージは見ていない」と否定されるリスクがあります。
重要な契約解除については、やはり内容証明郵便を使っておく方が安全です。
「一度解除したのだから、やっぱり続けます」は通らないことも
解除は、一度効力が発生すると原則として一方的に撤回できません。
あとから「やっぱり契約を続けたい」と思っても、相手が応じなければ元には戻せないケースが多いです。
まとめ:契約解除は「勢い」ではなく「準備」で決まる
- 契約解除通知は、強い法的効果を持つ重要な書面である
- 解除の対象・理由・催告・解除意思を明確に書くことが大切
- 内容証明郵便を利用して、後々まで残る証拠を作っておく
- 解除後の原状回復・返金・損害賠償にも目を向けておく
- 判断に迷う場合は、専門家に文面チェックを依頼する
契約解除は、トラブルを終わらせるための手段であると同時に、
進め方を誤ると新たなトラブルを生むきっかけにもなります。
感情だけで動かず、「いつ・どのような理由で・どの契約を終わらせるのか」を整理したうえで、慎重に通知を行うことが大切です。
「この内容で解除して大丈夫か不安」「どこまで書くべきか迷っている」といった場合には、
契約書の内容やこれまでのやり取りを整理したうえで、行政書士や弁護士に相談されることをおすすめします。




