エステ・脱毛サロンの中途解約トラブル|違約金が高すぎる時に送る抗議文の構成

「効果が感じられないので脱毛サロンを辞めたい」「引越しでエステに通えなくなった」
そう考えて中途解約を申し出たところ、サロン側から耳を疑うような高額な請求をされた経験はありませんか?

「契約書には『解約手数料がかかる』と書いてあります」「キャンペーン価格での契約だったので、解約時は定価(通常単価)での精算になります」
このように言われ、ほとんどお金が返ってこないどころか、追加料金を請求されるケースすらあります。

しかし、焦って支払う必要はありません。エステや美容医療の契約には法律(特定商取引法)による強力な消費者保護ルールがあり、サロン側が請求できる違約金の上限額は法律で明確に決まっています。

この記事では、サロンの不当な引き止めや高額請求に対抗するために知っておくべき法律知識と、正当な返金額を取り戻すための「抗議文(内容証明)」の構成について詳しく解説します。

この記事の要点
  • エステの中途解約における違約金の法的上限(2万円または10%)
  • 「定価(通常価格)」での精算計算が違法となる理由
  • サロンの主張を覆すための抗議文の書き方と構成要素
  • クーリングオフ期間を過ぎても解約は可能であることの確認

1. 「違約金が高すぎる!」エステ解約時に知っておくべき法律の上限

エステティックサロンや美容医療、語学教室などの継続的なサービス契約は、特定商取引法の「特定継続的役務提供」というカテゴリに分類されます(※期間が1ヶ月を超え、かつ契約金額が5万円を超える場合)。

この法律では、消費者が中途解約する際に、事業者が請求できる損害賠償等の額(いわゆる解約手数料・違約金)に厳格な上限を設けています。もし契約書にこれより高い金額が書かれていても、その部分は法律により無効となります。

パターンA:施術を受ける前(サービス開始前)の解約

契約は結んだものの、まだ一度も施術を受けていない段階で解約する場合です。

この場合、サロン側が請求できる違約金の上限は「2万円」です。
たとえ「契約締結手数料」や「事務手数料」などの名目であっても、合計して2万円を超える請求は認められません。

パターンB:施術を受けた後(サービス開始後)の解約

何回か通った後に辞める場合です。この場合、請求できる金額は以下の2つの合計額が上限となります。

  1. 既に提供されたサービスの対価(1回あたりの単価 × 受けた回数)
  2. 解約損害金(契約残額の10% または 2万円 のいずれか低い方の額)

つまり、解約手数料として取れるのは最大でも2万円までです。「違約金10万円」といった請求は明らかに違法です。

要注意!サロンがよく使う「通常単価精算」の罠

トラブルが最も多いのが、この計算方法です。
契約時は「キャンペーン価格」として1回1万円で契約したのに、解約時には「中途解約の場合は割引が無効になり、定価(1回3万円)で計算します」と言われるケースです。

この計算をされると、「既に受けたサービスの対価」が跳ね上がり、返金額がゼロになったり、逆に追加請求が発生したりします。

しかし、経済産業省の通達や過去の裁判例では、「契約時の単価(キャンペーン価格)を基準に精算すべき」という見解が一般的です。実質的に解約を制限するような不当に高額な「定価」での精算は、消費者契約法10条(消費者の利益を一方的に害する条項)により無効となる可能性が高いのです。

2. 違法な請求に対抗する!抗議文(内容証明)の構成要素

サロンのスタッフと口頭で議論しても、「規約ですから」の一点張りで話が進まないことがほとんどです。また、電話では「言った言わない」の水掛け論になります。

そこで有効なのが、法的根拠に基づいた書面を送ることです。特に「内容証明郵便」を利用すれば、サロンの本部や法務担当者が対応せざるを得なくなり、適正な計算での返金に応じる可能性が高まります。

ここでは、ご自身で作成する場合や専門家に依頼する場合に含めるべき、抗議文の構成要素を解説します。

構成要素1:契約の特定(基本情報)

まずは、どの契約についての話なのかを明確にします。

  • 契約日
  • 契約者氏名
  • 契約したコース名・プラン名
  • 契約番号(会員番号)
  • 契約総額および支払済み金額

構成要素2:中途解約の意思表示

「特定商取引法第49条に基づき、本契約を将来に向かって解除(中途解約)します」と明確に宣言します。
※中途解約に「理由」は必要ありません。「引っ越し」や「効果不満」などの理由を書く必要はなく、法的な権利として解約を通知します。

構成要素3:サロン側の計算への反論(法的根拠)

ここが最も重要な部分です。サロンから提示された精算金額が不当であることを指摘します。

【書き方の例】
「貴社は解約に伴い、通常単価(定価)による精算を行い、金〇〇円の違約金を請求しております。しかしながら、特定商取引法第49条および同法施行令において、中途解約時の違約金上限は『2万円または契約残額の10%のいずれか低い額』と定められています。
また、契約単価(割引価格)と乖離した通常単価を用いて、返金額を著しく減額、あるいは追加請求を行うことは、実質的な違約金の請求に他ならず、同法および消費者契約法第10条に違反し無効です。」

このように、「法律違反である」という言葉を使って強く主張します。

構成要素4:正しい計算に基づく返金請求

ご自身で「契約単価」を元に計算し直した金額を提示します。

【計算ロジック】
返金請求額 = 支払総額 - (契約単価 × 消化回数) - 法定の解約手数料(最大2万円)

その上で、「本書面到達後〇日以内に、下記口座へ上記金額を返金してください」と期限を切って要求します。

3. 化粧品やサプリメントなどの「関連商品」はどうなる?

エステの契約とセットで購入させられた高額な化粧品や美顔器、サプリメントなどは、解約時に返品できるのでしょうか。

特定商取引法では、エステ契約に付随して販売される商品を「関連商品」と呼び、これらも中途解約の対象となる場合があります。

返品・解約ができる条件

  • 推奨使用商品であること:「エステの効果を出すために必要」と言われて購入したもの(法律で指定された品目に限る)。
  • 未使用であること:ただし、「サロンで開封させられた」「使用を指示された」場合は、開封済みでも返品できる可能性があります。

逆に、消費者が自分の意思で勝手に開封した場合や、全て使い切ってしまった場合は返品できないことが多いです。抗議文の中で「関連商品の売買契約も解除し、商品を返還します」と記載する必要があります。

4. クーリングオフと中途解約の違いを整理

「クーリングオフ」と「中途解約」は似ていますが、適用条件と効果が全く異なります。ご自身の状況がどちらに当てはまるか確認しましょう。

比較:クーリングオフ vs 中途解約
項目クーリングオフ中途解約
期間契約書を受け取った日から8日以内9日目以降(期間内ならいつでも)
返金額全額返金(治療済みでもお金は戻る)手数料を引いた残額が返金
違約金一切請求できない上限あり(最大2万円など)

契約してから8日以内であれば、迷わず「クーリングオフ」を行ってください。ハガキや電磁的記録(メール等)で通知するだけで、無条件で白紙撤回できます。

5. サロンが返金に応じない場合の対処法

抗議文(内容証明)を送ってもサロン側が「規約に同意のサインをしているから払わない」と無視する場合、次の手段を検討します。

クレジットカード払いの場合:支払停止の抗弁

クレジットカードのリボ払いや分割払いで支払っている場合、カード会社に対して「支払停止の抗弁書」を提出することで、引き落としを一時的にストップできる権利があります。
「サロンと解約トラブルになっている」とカード会社に通知することで、カード会社が加盟店(サロン)に対して調査を行い、その結果、解約が認められるケースがあります。

消費者生活センターへの相談

局番なしの「188(いやや)」に電話すると、最寄りの消費者センターに繋がります。相談員が間に入ってくれる「あっせん」を行ってくれる場合があります。

エステ解約トラブルQ&A

「コースの有効期限が切れているので返金できない」と言われました。

規約の内容次第ですが、争う余地はあります。
本来、商事消滅時効は5年です。サロンが勝手に短い有効期限(例えば1年など)を設定し、それによって一方的に返金義務を免れる条項は、消費者契約法により無効となる可能性があります。ただし、交渉は難航しやすいため、専門家への相談をお勧めします。

電話が全く繋がらず、解約手続きができません。

すぐに内容証明郵便を送ってください。
電話が繋がらない間に月日が経ち、月額料金が発生したり、クーリングオフ期間が過ぎたりするのはサロン側の思う壺です。書面を送った日が「解約申し出日」として証拠に残るため、電話をかけ続けるよりも書面を送付するのが確実です。

ローン会社への連絡は必要ですか?

必須です。
サロンとの契約と、ローン(クレジット)契約は別物です。サロンに解約通知を送ると同時に、クレジット会社にも解約した旨を連絡し、引き落としを止める手続き(抗弁書の提出など)を行う必要があります。

まとめ:泣き寝入りせず、法の盾を使って権利を守ろう

エステや脱毛サロンの契約は高額になりがちです。だからこそ、法律は消費者を守るために強固なセーフティネットを用意しています。

サロン側が提示する「違約金計算書」が絶対ではありません。むしろ、知識のない消費者から少しでも多くのお金を取ろうとする、不当な計算であるケースが多々あります。

「おかしいな」と思ったら、サインをする前に一旦持ち帰り、法律の上限と照らし合わせてみてください。そして、不当な請求に対しては、内容証明郵便という「公的な証拠」を用いて、毅然とした態度で抗議しましょう。
ご自身での作成が難しい場合や、計算が複雑な場合は、消費者問題に詳しい行政書士にご相談ください。

内容証明サポート・料金プラン一覧

ご自身で試したい方から、全て専門家に任せたい方まで。目的とご予算に合わせてお選びいただけます。

【無料テンプレート】基本フォーマット
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執筆者情報

執筆者の顔写真

深沢文敏

内容証明専門家・行政書士

行政書士登録番号:第14130403号

一部上場企業を退職し独立、事務所を開設。内容証明郵便の作成支援において10年以上の実績を持ち、年間200件以上の相談に対応。特に男女関係、金銭トラブル、契約解除などビジネス法務に関する内容証明作成を得意とする。素早い対応と分かりやすい説明そして的確なアドバイスで、多くの依頼者の悩みを解決に導いている。

→ 深沢文敏のプロフィール詳細を見る

参考資料・情報源

本記事の執筆にあたり、以下の公的機関および法令情報を参照しています。違約金の上限額や具体的な解約ルールについては、最新の公式情報をご確認ください。

  • 特定商取引法ガイド(消費者庁)
    エステ・美容医療などが該当する「特定継続的役務提供」のルールが解説されています。中途解約時の「違約金の上限(サービス提供前2万円、提供後2万円または残金の10%など)」について法的根拠を確認できます。
    https://www.no-trouble.caa.go.jp/what/continuousservices/
  • 独立行政法人 国民生活センター
    エステティックサービスの契約トラブル事例や、中途解約に関するFAQが掲載されています。抗議文を送っても解決しない場合の相談窓口「消費者ホットライン(188)」の案内もあります。
    https://www.kokusen.go.jp/soudan_topics/data/esthe.html
  • 消費者契約法(消費者庁)
    事業者が定めた「平均的な損害の額を超えるキャンセル料」の条項を無効とするルール(第9条)など、消費者を守る法律の詳細を確認できます。
    https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_system/consumer_contract_act/
  • 日本エステティック機構(JEO)
    エステティック業界の健全化を目指す第三者機関です。「消費者相談センター」を設けており、契約に関するトラブルの相談を受け付けています。
    https://esthe-jeo.jp/consumer/
  • 政府広報オンライン:クーリング・オフと中途解約
    契約をやめたい時の具体的な手続き方法や、書面(ハガキ等)の書き方について分かりやすく解説されています。
    https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201101/2.html

※本記事は、上記の法令、公的機関の情報、専門書籍等を参考に執筆されていますが、個別の事案に対する法的アドバイスではありません。具体的な問題については、専門家にご相談ください。

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