婚約破棄の理由が”相手の親”のせい…慰謝料は誰にいくら請求できる?

婚約破棄の理由が“相手の親”のせい…慰謝料は誰にいくら請求できる?
「彼(彼女)は結婚したいと言っていたのに、親が反対して破談に…」
婚約破棄の原因が相手の親による干渉・反対というケースは珍しくありません。
しかしそのような場合、慰謝料を請求できるのは本人だけなのか? それとも親にも責任が及ぶのか?
この記事では、行政書士の視点から「親の介入による婚約破棄」と慰謝料請求の実務を詳しく解説します。
「親のせいで婚約破棄」――よくある3つのパターン
1. 親が相手を強く否定して破談になった
たとえば「職業や学歴が気に入らない」「家柄が合わない」など、偏見的な理由で親が結婚を反対するケース。
本人が親の意見に逆らえず、結果的に婚約破棄となった場合は、親の干渉が原因で破談になったと認められる可能性があります。
2. 親が一方的に交際を禁止・連絡を遮断した
「もう連絡を取らないでほしい」と親が勝手に介入し、本人の意思とは無関係に関係を断たせるケースもあります。
このような場合、本人だけでなく親の行動にも不法行為責任が問われる可能性があります。
3. 結婚準備が進んだ後に、親が突然反対した
結婚式場の予約や指輪の購入など、準備が進んでいた段階で親が急に反対し、破談になるケース。
精神的ダメージや経済的損失が大きいため、慰謝料請求の根拠が明確になりやすい特徴があります。
婚約破棄に「親の干渉」が関係している場合でも、最終的に破棄を決断したのが本人であれば、責任の中心は「本人」にあります。
ただし、親の行為が極めて強引だった場合は、親自身にも一定の法的責任が認められる余地があります。
慰謝料を請求できるのは誰?法的責任の整理
1. 原則として「婚約者本人」に請求する
婚約関係は、あくまで当人同士の合意によって成立します。したがって、婚約を破棄したのが親の指示であっても、基本的には婚約者本人が責任を負う形となります。
親の反対を理由に破棄することは、法律上「正当な理由」とは言えません。
2. 親に「不法行為責任」が認められるケース
以下のような行動があった場合、親に対しても慰謝料を請求できる可能性があります。
- 暴言・脅迫など、強引な干渉によって破談に追い込んだ
- 相手の人格や家族を侮辱する発言を繰り返した
- 本人が結婚を望んでいたにもかかわらず、親が一方的に連絡を遮断した
このような行為は「第三者による不法行為」として、親にも損害賠償請求(民法709条)が可能です。
Q: 親が勝手に結婚を反対した場合でも、慰謝料を取れるの?
A: 親の干渉が「社会通念上許されないほど強引」だった場合に限り可能です。
ただし、単なる意見や助言の範囲であれば法的責任は問えません。
慰謝料の相場と請求できる金額の考え方
1. 本人への慰謝料:50〜200万円が目安
婚約破棄全体の慰謝料相場は、一般的に50〜200万円程度です。
ただし、破棄の経緯・期間・精神的苦痛の度合いによって増減します。
2. 親にも責任が認められる場合:共同責任で請求可能
親の介入が極端で、精神的苦痛が大きい場合は、本人と親を連帯して請求することも可能です。
たとえば「本人に100万円+親に50万円」というような形で分担責任を求めるケースもあります。
3. 実損がある場合は別途請求できる
式場キャンセル料や衣装代など、実際の経済的損害(実損)については別枠で請求できます。
「慰謝料+実損」で請求額を整理するのが実務的です。
慰謝料の金額を決めるときは、感情ではなく「証拠ベース」で考えることが重要です。
メール・LINE・録音・メモなど、親の発言や行動を裏づける資料を集めましょう。
書面での請求方法と注意点
1. 書面の基本構成
婚約破棄による慰謝料請求書には、以下の要素を盛り込みます。
- 婚約の経緯と破棄の事実
- 親の行為や発言の内容
- 受けた精神的損害の程度
- 請求金額と支払い期限
これらを明確にすることで、相手に「逃げられない現実」を突きつける効果があります。
2. 内容証明郵便を利用する
書面は内容証明郵便で送るのがベストです。
「法的手続きを視野に入れている」ことを示すことで、相手の対応が一変します。
3. 親に送る場合の注意点
親に対して直接送る場合は、表現を慎重に選びましょう。
強い表現は逆効果になりやすいため、「あなたの行為により結果的に精神的苦痛を受けた」というように、淡々と事実を述べます。
Q: 親に内容証明を送るのはやりすぎでは?
A: 感情的な報復ではなく、法的に冷静な請求であれば問題ありません。
ただし、明確な証拠や合理的根拠がある場合に限定しましょう。
実際に親へ責任が認められた裁判例
1. 親の強い干渉により婚約破棄となった事案
判例では、親が「相手の家柄を理由に強引に反対」した結果、本人が婚約を解消したケースで、親にも損害賠償が認められた例があります。
裁判所は「社会的に許容される親の関与の範囲を超えている」と判断しました。
2. 結婚準備中の介入で損害賠償を認めた事例
式場契約や招待状発送などが進んでいた段階で、親が介入して破談に至った場合、
キャンセル料などの実損を含め、慰謝料として数十万円が認められた例もあります。
これらの事例では「親が破談を主導した」「本人が結婚を望んでいた」という点が重要な判断要素となっています。
単なる助言の範囲では責任を問われません。
感情的にならず冷静に進めるためのポイント
1. 「敵にしない」姿勢で書面を整える
怒りのままに書くと、かえって相手を刺激して交渉がこじれます。
「誠実な話し合いを希望する」という文面を意識しましょう。
2. 専門家の第三者視点を活用する
行政書士や弁護士が介入することで、法的な言葉遣いと冷静なトーンで文書を仕上げられます。
相手に「本気で対応している」と伝える効果も絶大です。
3. 書面作成を「自分を守る証拠」として残す
内容証明郵便や相談記録は、将来トラブルが再燃した際にも大切な防御手段になります。
自分の正当性を裏づける「記録」として残しておきましょう。
婚約破棄の原因が親の干渉であっても、泣き寝入りする必要はありません。
まずは本人に対して法的責任を問い、親の行為が常識を超えていれば、親にも請求が可能です。
冷静に書面を整え、あなたの立場を守る行動を取りましょう。