不貞相手が「既婚者と知らなかった」と主張した場合の慰謝料請求の攻防

不貞相手が「既婚者と知らなかった」と主張した場合の慰謝料請求の攻防
不貞慰謝料の請求において、不貞相手が「既婚者であることを知らなかった」と反論するケースは少なくありません。この主張が認められるかどうかは、慰謝料請求の成否を大きく左右します。本記事では、判例や実務の運用を踏まえつつ、このような場面での攻防ポイントを5000文字規模で徹底解説します。
不貞慰謝料請求の基本原則
不貞慰謝料が認められる要件
慰謝料請求が成立するには、①配偶者の不貞行為、②夫婦関係の平和が侵害された事実、③不貞相手に故意または過失があること、が必要です。特に第三者に対しては「相手が既婚者であることを認識していたか」が争点になります。
不貞相手の責任範囲
配偶者は不貞の主体として当然責任を負いますが、不貞相手については「認識の有無」によって責任が変わります。そのため「知らなかった」という主張は防御の中で最も多用されるものです。
「既婚者と知らなかった」主張の法的扱い
判例における考え方
裁判例では、不貞相手が「既婚者であることを知らなかった」場合、原則として責任は認められません。ただし「通常なら分かる状況だったのに確認を怠った」とされる場合には過失が認められることもあります。
注意義務と過失の判断
相手の生活実態や会話内容から、既婚者であることを推測できたかどうかが重視されます。例えば、家庭の事情を示す発言があったり、休日の行動が限定的だった場合には「疑うべきであった」と評価される可能性があります。
ポイント:「知らなかった」という主張が認められるには、合理的に既婚者と気づけなかった事情を具体的に説明できることが重要です。
攻防の具体的な場面
原告側(慰謝料請求する側)の立場
原告としては「不貞相手は既婚者であると知り得たはずだ」と主張することが求められます。LINEやメールのやりとり、SNS投稿、知人の証言などが証拠として有力です。
典型的な主張例
- 相手の指輪や家族写真を見ていた
- 「妻」「夫」という表現が会話で出ていた
- 休日に会えないなど不自然な制約があった
被告側(不貞相手)の立場
一方、不貞相手は「独身だと信じるに足る事情があった」と主張するのが一般的です。たとえば独身と偽られて交際していた場合や、生活状況から家庭があると気づけなかった場合が考えられます。
実務における立証の難しさ
証拠の乏しさと推認
不貞の事実は隠されることが多く、「相手が既婚者と知っていたか」を直接示す証拠は少ないのが実情です。そのため、状況証拠や言動から裁判官が推認するケースが多いです。
請求が認められやすいケース
以下のような場合は「既婚を知っていた」と判断されやすいです。
- 不倫相手が家庭に出入りしていた
- 配偶者の存在を示す物品(郵便物・家族写真)を目撃していた
- 交際中に周囲が「既婚者だ」と認識していた
慰謝料額への影響
責任が認められた場合
「既婚者と知っていた」と判断されれば、相場として100〜300万円程度の慰謝料が認められることが多いです。夫婦関係が破綻していなければ金額は上がります。
責任が否定された場合
一方で「既婚者と知らなかった」という主張が認められると、不貞相手への慰謝料請求は棄却されます。この場合、責任は配偶者本人に限定されます。
Q:「相手が既婚者と知らなかった」と言われたら慰謝料は請求できないのですか?
A:原則として請求は難しいですが、「知り得たはず」と立証できれば請求は可能です。証拠集めが非常に重要になります。
実務での対応と戦略
原告側の実務戦略
慰謝料を獲得するためには、証拠収集が最優先です。探偵調査報告書やLINE履歴を確保し、裁判官が「既婚者だと気づけた」と判断できる状況を作る必要があります。
被告側の実務戦略
一方で不貞相手側は「既婚者だと信じられない状況だった」ことを具体的に説明し、過失を否定することが重要です。嘘をつかれていた経緯や、独身を示す行動(単身赴任、未婚と紹介されていた等)を示すと有効です。
まとめ
不貞相手が「既婚者と知らなかった」と主張した場合、慰謝料請求の可否はその立証の強弱に大きく依存します。原告は「知り得た事情」を、被告は「知らなかった合理性」を示すことが鍵です。最終的には証拠力と説得力が結果を分けます。慰謝料請求を検討している方は、専門家に早めに相談し、戦略的に動くことが望まれます。