ブラック相続シリーズ

第4話 隠された借金|相続放棄が間に合わなかった弟

第4話 隠された借金|相続放棄が間に合わなかった弟

これは、ある家族の相続にまつわる実話をもとにした物語です。主人公は長男・浩一さん(仮名・50代)。そして彼の弟・健太さん(仮名・40代)。二人の兄弟の間には特に確執はなく、疎遠でもなく、ごく普通の関係を築いてきました。

ある日、父親が急逝。闘病の末の死であったため、家族はある程度覚悟していたものの、葬儀や手続きに追われる日々が続きました。そんな中、父の遺産について話し合う場面が訪れます。

父には資産があるはずだった…

「父は堅実な人だった。持ち家もあったし、年金もちゃんともらっていた。借金なんてあるわけない」

浩一さんはそう信じて疑っていませんでした。ところが、遺品整理の途中で見つかった一通の封筒。それは消費者金融からの督促状でした。「残債額:480万円」

浩一さんは驚き、すぐに健太さんと話し合います。健太さんは動揺しながらも言いました。

「兄貴…まさか相続放棄、間に合わないなんてことないよな…?」

相続放棄には「期限」がある

相続放棄は、家庭裁判所での手続きを通じて、相続の権利を放棄する手続きですが、その期限は「相続があったことを知ってから3ヶ月以内」と法律で決められています。

問題は、「相続があったことを知った日」=「父が亡くなった日」と解釈されやすいこと。つまり、父が亡くなってから3ヶ月以内に動かないと、相続放棄ができなくなるリスクがあるのです。

健太さんは期限ギリギリで家庭裁判所に相談しましたが、審査中に却下されてしまいました。理由は「債務の存在にもっと早く気づけたはず」という判断だったのです。

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借金の相続が現実になった瞬間

その後、消費者金融から正式に「借金返済義務の継承」を通達されます。健太さんは現実を受け止められず、何度も問い合わせましたが、結果は変わりませんでした。

しかも、父名義の他の借入も次々と明らかになり、総額は約700万円にのぼりました。

浩一さんは不動産の名義変更などで忙しく、健太さんがすべての債務を負うことに。兄弟の関係にもヒビが入り、家族内の信頼関係も崩れてしまいました。

こうすれば防げたかもしれない

・死亡後すぐに遺品を整理し、金融書類をチェックすること
・疑わしい債務があればすぐに専門家に相談すること
・3ヶ月以内に家庭裁判所への相続放棄手続きを進めること
・専門家に「債務の発覚日」を明確に証明してもらう

相続放棄が間に合えば、こうした借金を引き継がずに済んだかもしれません。相続=プラスの財産とは限らないのです。

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まとめ:備えなければ奪われる

相続には、見えないリスクが潜んでいます。表面上は資産家に見えても、実際は多重債務を抱えているケースも珍しくありません。

「知らなかった」では済まされない事態になる前に、相続開始後すぐに動けるよう、信頼できる専門家のサポートを受けておくことが重要です。

特に相続放棄は、「知らなかった」ことを証明できるかが鍵になります。相続トラブルの多くは、この「見えない借金」が引き金になっています。

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